アンカーボルトQ&A
基本および性能
建築物の基礎構造とその特徴は?
建築基準法施行令第66条に建築構造物の柱脚は露出形式柱脚、根巻き形式柱脚、埋め込み形式柱脚が規定されています。この3種類の柱脚の中でJSS IIの建築構造用アンカーボルトの規格は露出柱脚に使用するものであり、露出形式の柱脚は他の2種類の柱脚に比べて構造が簡素で施工もしやすく、コストも安く出来る特徴をもっています。但し、通常は他の2種類の柱脚より低い建物、即ち使用される柱(鋼管)のサイズが小さい方に使用されています。
アンカーボルトの役割と必要な機能は?
アンカーボルトは鋼構造建築物の上部構造(建物)と基礎コンクリートとをつなぐ重要な部品です。JSSⅡの規定では大地震時に露出柱脚部に生じる大きな歪み(回転変形)をアンカーボルトの塑性変形で吸収できる性能を有するものとして、ボルト、ナット、座金のセットで規格化されています。柱脚としての構造性能(耐力と回転剛性)はボルトのサイズ゙、本数などを適切に設計することで確保されます。
アンカーボルトの必要耐力とは?
アンカーボルトの必要耐力という前にボルト、ベースプレート、基礎コンクリートなどの柱脚としての耐力がまず問題となります。また、耐力は柱脚が変形する前の剛体としての耐力(許容耐力)と柱脚の一部が塑性変形して最終的に破断する耐力(終局耐力)があります。これらの耐力は露出形式柱脚各部をどのように設計するかという設計条件によって異なります。従ってアンカーボルト自体の必要耐力は設計条件に応じて決まることになります。
アンカーボルトに必要な伸びとは?
露出形式柱脚に使用するアンカーボルトはネジ部だけが部分的に伸びるのではなく、軸部全体も伸びて地震時の歪みを吸収させなくてはなりません。10階以下程度の中低層の建物では地震時に塑性化して伸びる部分(定着長さという)がボルト軸径の20倍以上あれば、この定着長さの部分が3%以上伸びて地震時の歪みを充分吸収できるといわれています。(アンカーボルトメーカー協議会のカタログ2ページに伸び能力が掲載されています)。
コンクリートの付着力は?
アンカーボルトの耐力にコンクリートの付着力が影響するのはボルトが伸びるまでの弾性域内であって、この間はボルトとコンクリートが一体として剛体となって働いています。ひとたびボルトが塑性して伸びる段階ではコンクリートの付着力は耐力に関係がありません。
アンボンドスリーブは必要ないのか?
ボルトの塑性伸びが問題となるのは大地震時であり、この時はボルトも伸びて細くなります。ボルトが伸び出す段階ではコンクリートの付着は切れていますので、アンボンドスリーブを使用しなくても問題はありません。この点は多くの実験で確認されています。
必要な伸びは、アンカーボルトのどの部位間で考えるか?
アンカーボルトを柱脚としてセットした時のいわゆる定着長さといわれる部分です。定着長さの上端はベースプレートのすぐ上のナットの下面と、下端は定着板の下面のナットの上面で、この上下間のボルト長さが定着長さです。
定着板の役割は?
定着板はアンカーボルトの下端部を固定(定着)する役割を担うものです。ボルトが塑性変形してコンクリートとの付着力が切れた後もボルトが破断するまでボルトを保持すると同時に、コンクリートによる抵抗を確保するために必要です。
定着板の規格は?
定着板の役割は、Q8で述べたとおりです。定着板はコンクリート中に埋め込まれているため、その強度は定着板を起点とするコンクリートのコーン状破壊耐力以上が必要となります。そして、コンクリートのコーン状破壊は基礎コンクリーて中のアンカーボルトの位置の影響を受けます。一般にはそのボルトに対応した座金程度の大きさがあれば十分その働きをするといわれています。板厚はボルト径に応じて変りますが、その適切な寸法サイズについて2004年改正版で、必要最低限の標準寸法・形状と設計基準が規格解説に記載されています。また、これを基とした協議会の推奨寸法も公表されています。
JIS規格「基礎ボルト」との関連は?
JIS B 1178基礎ボルトは建築構造用に使用する目的に限定して規定された物でなく、設備機器の固定や負荷の大きくない構造物の固定用に規定されています。従って引張強さは400KN級であっても伸び能力は規定されていません。ねじ部は通常の棒鋼の寸法公差のものに切削ねじをたてたものであり、降伏後はねじ部に応力が集中して伸び破断してしまうため、建築構造用には向かないものです。
「建築用」とは、建造物のどの範囲なのか?
建築構造用とは通常の表現で言う、事務所、倉庫、工場、ビルなどの建物に用いるという意味で捉えてください。建築基準法施行令では構造耐力上の主要部材と位置付けされています。即ち、強度や伸び性能が必要な建築構造用ということになります。
M16未満やM100超えはなぜ規格にないのか?
露出柱脚用に使用されているアンカーボルトサイズを調査して、M16未満はほとんど使用されておらず、上限のボルトサイズも露出形式の柱脚に使用されている柱サイズを考えて上限をM100としています。このJSSⅡの規格で設定しているアンカーボルトABR400、ABR490、ABM400、ABM490では、サイズM16からM100まででねじ部降伏耐力を37kNから2060kNまで網羅しており、通常の建築構造用のアンカーボルトとしての設計範囲は十分網羅しています。