JFMA (Japan Foundationbolt Manufactures Association) 建築用アンカーボルトメーカー協議会

JIS規格 性能

1. ABRとABM規格製品の性能比較

図

 右のグラフはM36のアンカーボルトを用いて、SNR490Bを材料とするABR490とABM490における引張試験結果を比較したものです。いずれのアンカーボルトも全長900㎜、両端のねじ加工長さ145㎜です。

寸法データ(M36)
ABR490 ねじ部有効断面積(転造) 817mm2
軸部有効断面積 864mm2
ABM490 ねじ部有効断面積(切削) 865mm2
軸部有効断面積 1,020mm2

このグラフから次のことが判ります。

ABRでは、軸部断面積はねじ部有効断面積と近似しているため、ねじ部と軸部がほぼ同時に降伏し、軸部が十分塑性変形するまで各部の破断が起きないため、ボルト全体の伸びは素材の性能に近い約20%の伸びを発揮します。

ABMでは、初めに断面積の小さいねじ部が降伏し、ねじ部の歪硬化により応力上昇して軸部降伏耐力に達した後に軸部が塑性変形する様子が判り、ねじ部の破断までに約9%の伸び性能を発揮します。

2. ねじ部の加工状態の比較

転造ねじは、塑性加工の影響で写真1に見られるようにファイバーフローがねじ山の形に沿って流れ、圧縮された谷底部分が特に緻密になりねじの谷の硬度が上昇しねじとしての強度も上昇します。そのためにねじ部と軸部との引張強度における差が極めて小さくなり軸部降伏開始後十分な12%以上の耐力上昇が可能です。

切削ねじは、切削加工の影響で写真2に見られるようにファイバーフローが切断されてしまい、ねじ部の強度の上昇もないため、転造ねじより性能的に劣る部分はありますが、ABM規格においてはボルト素材の降伏比制限を0.75以下に厳しく制限すること、及び細目ねじピッチ採用でねじ部の断面欠損率の向上により、アンカーボルトに軸部降伏後の12%の耐力上昇を持たせ、所定の一様伸び(3%)以上を確保しています。

図

3. セット部品のナットと座金

 本製品に使用するナットと座金はJIS B 1220の附属書 B.構造用六角ナット C.構造用平座金として規格化しています。ナットと座金はアンカーボルトセットの性能を保証するのに十分な強度と寸法となっております。

4. 設計・施工の基本的考え方

 本製品は、「2015年版建築物の構造関係技術基準解説書」に、伸び能力のあるアンカーボルトとしてABR、ABMが明示されています。
 また、本製品を建築構造物へ使用するにあたっては、「建築構造用アンカーボルトを用いた露出柱脚設計施工指針・同解説(社)日本鋼構造協会発刊」にて詳細に解説されています。

伸び能力が保証されたアンカーボルトセットの設計は、柱材の曲げ耐力の20%程度の曲げモーメントに対して半剛接として柱脚を設計することを基本とし、次の基本方針としています。

1) 最下層柱の脚部に作用する軸方向力、せん断力、曲げモーメントが基礎に確実に伝達されるように柱脚を設計する。

2) 最下層柱の降伏に先行してアンカーボルトが降伏する柱脚ヒンジ型の柱脚として設計することを原則とする。

3) 設計ルートは、ルート3によることを原則とするが、ルート1-2およびルート2によってもよい。

柱脚工事の基本は、設計された柱脚部の柱と脚部の位置を正確に確保するため、正しい手順で工事を行なうことを基本とし、次の基本方針としています。

1)アンカーボルトの設置においては、ボルトの高さと平面的な位置を確保することが基本であり、そのために原則として上下にゲージプレートを配置した箱状のアンカーフレームおよび設置用架台を用いる。

2)ナットの締付けにおいては、ベースモルタルを介して柱脚のベースプレートを基礎コンクリートに密着させ、長期間にわたって緩まないように 全ボルトを均一のトルクで1次締め付け後、本締めをすることが基本である。1次締め目標トルクは、ねじの呼びM16〜M22が70N・m程度、M24〜M27が100N・m程度、M30〜M42が200N・m程度、M48〜M72が300N・m程度、M76〜M100が400N・m程度とする

3)ベースモルタルの充填においては、ベースプレートと基礎コンクリートとの密着性を高めることが重要であり、モルタルを柱脚のベースプレート下部に満遍なく確実に充填することが基本である。

4)鉄骨建て方時においては、アンカーボルトの台直しは禁止である。ベースプレートのボルト孔とアンカーボルトの位置にずれが生じ、ベースプレートが正規の位置に納まらない場合は、アンカーボルトの台直しはせずにベースプレートのボルト孔をあけ直し、建て方終了後に十分な補強板を当ててベースプレートと溶接する。

5)構造用アンカーボルトセット設置施工工程例(参考資料)

施工工程 工事管理者 柱脚施工管理技術者 柱脚施工技能者

① 柱脚工事の施工前打合せ

・安全、作業環境、施工計画図の確認と承認

・安全、作業環境、施工計画図の作成と提出

② 柱脚工事の施工作業前の準備

・仮設

・墨出(柱芯)

・捨てコンレベル出し

・関連報告書の確認と承認

・捨てコン厚みの確認

・柱芯墨の確認

・工事部材の数量および寸法確認

・関連報告書の作成と提出

③ アンカーフレームの設置作業

・関連報告書の確認と承認

・設置作業の立会いと確認

・関連報告書の作成と提出

・架台およびフレームの組立

・設置

・ボルトねじ部の養生

④ アンカーフレーム設置後の確認

・関連報告書の確認と承認

・レベル、柱芯間寸法の確認

・関連報告書の作成と提出

・位置ずれ箇所の修正

⑤ 基礎コンクリート打設前の確認

・基礎配筋

・型枠設置

・関連報告書の確認と承認

・レベル、柱芯間寸法の確認

・アンカーフレーム間の位置確認

・関連報告書の作成と提出

・位置ずれ箇所の修正

⑥ 基礎コンクリート打設後の作業

・レベルモルタルの設置

・鉄骨建方

⑦ ベースモルタルの充填

・関連報告書の確認と承認

・ベースモルタル充填の確認

・関連報告書の作成と提出

・ベースモルタルの充填

⑧ アンカーボルトの締付け

・関連報告書の確認と承認

・アンカーボルトの締め付け作業の確認

・関連報告書の作成と提出

・アンカーボルトの締め付け

⑨ 報告

・各作業工程が終了した旨の報告書を作成し、工事管理者の承認を得る

参考図書

参考図書

JIS B 1220 構造用両ねじアンカーボルトセット

一般財団法人 日本規格協会 発行

建築構造用アンカーボルトを用いた露出柱脚設計施工指針・同解説

一般社団法人 日本鋼構造協会 発行